第五話「旧校舎の怪」
クラスの子たちと旧校舎で肝試し、きっと怖いだろうけどちょっぴり憧れました。
先発組だと思って声をかけたら一つ目の妖怪だった、読んでいるこっちも主人公たちと同じようにぎょっとなりました。
「もしかして、この世の者でないものが見えてるの?」
夏目が隠し続けてきた秘密に触れようとする笹田。
「中傷めいた噂がたっても構わない。けれどお世話になっている夫婦に迷惑がかかったら決して許さない」
夏目と笹田の間にピリピリとした緊張感が漂う中、にゃんこ先生が笹田に頭突きを喰らわせた場面には思わず吹き出してしまいました。
一つ目の妖怪の正体は、逃げ出さないように顔に傷をつけられ、足も一本取られてしまった、人間嫌いの心優しい神様。
時雨様に名を返す夏目、その時夏目に流れ込んできた時雨様の記憶に胸がきゅっとなりました。
笹田の頭にぽんと優しく手を乗せ、「さらば」と消えていった時雨様の場面は特に切なかったです。
第六話「夏目、妖を呼びだす」
絡まれた妖に謎のあざをつけられてしまった夏目。そのあざに触れてしまい、呪いの余波を受けてしまったにゃんこ先生がちっちゃくなってしまう場面、ついふふっとなってしまいました。
ちっちゃくなってしまった理由は物騒ですが、ちんまりちょこんとしたにゃんこ先生、サイズ感が何とも言えないかわいさです。
そんなにゃんこ先生を一目見たヒノエが「何だそのヘチャムクレ姿は」と爆笑する場面もおもしろかったです。
いくら何でも爆笑し過ぎではと思いつつ、「ヘチャムクレって…」と私もつい笑ってしまいました。
呪いを解くために協力してくれる個性豊かな妖たちのおかげで、夏目にかけられた五日印の呪いが無事解けた瞬間は私もほっとしました。
風邪をひいてしまった夏目のため、ヒノエがお見舞いに来たまではよかったものの、結局にゃんこ先生とヒノエの口喧嘩が始まってしまう場面、騒がしいけれど微笑ましいなとほっこりしました。
第七話「見える人」
夏目と同じように、妖が見える男・名取。夏目の他にも見える人がいるのかと、私も夏目と同じように衝撃を受けました。
そして、首に縄をかけられたお面の妖怪。祓われる予定だったこの妖怪が、名取さんの幼少期に深く関わりがある妖怪だった、それを命がけで止めようとする夏目の姿に読んでいるこっちもハラハラしました。
傷だらけの手に包帯を巻いてくれた幼いころの名取さんのため、「あの子になら祓われてもいい。あの子の手柄になるのは喜ばしい」と自ら祓われに行こうとする妖の姿がとても切なくて印象的でした。
妖が見えるせいで周りから疎まれ、「僕が不幸を呼び寄せた」と言う幼い名取さんに、「人の子には不幸を招く力なんてないんだよ。お前は優しい子だよ」と、お面の妖怪がかけた言葉が優しさに満ちていて好きでした。
第八話「アサギの琴」
夏目友人帳の中でもトップ10に入るぐらい、個人的に好きな話です。
空からふわっとぼろぼろの和傘が飛んできて、中から包帯ぐるぐる巻きの妖・アカガネが出てきたときはさすがにぎょっとしましたが、病に罹ったアサギのために尽力する姿はとても一途できゅんとしました。
磯月の森で壬生神様のためだけに蒼琴を弾いていたアサギ。身体が乾いた土のようになり崩れていく奇病に罹ったアサギの最後の望みは、優しくて大切な友人であるアカガネのため蒼琴を弾くことだった、という場面が特に好きでした。
お互いがお互いを想い合う姿はとても切なく、でも優しさに満ちていて涙が込み上げてきました。
出会いと別れ、大切な誰かを想う心、その奇跡と儚さに何度読んでも胸がじーんとなります。