大好きなお話です。内容も好きですが、とにかく出てくる食べ物や飲み物がすべて美味しそうです。
とくに葉月くんの作る料理は読後に真似して作ってみるほどでした。
夏場に読んでいたので、作中でも夏休みのランチのシーンに登場する「パワーそうめん」が本当に美味しそうで、印象に残っています。ページを食い入るように見つめていました。
葉月くん曰く、熱いあごだしかけてにゅうめんにもできるそれは、七花ちゃんやアニーズみんなのパワーの源になっているようでした。のばらちゃん兄妹が、一生懸命作った野菜ですものね、パワーがつくのもわかります。これはれんげちゃんの兄の風人くんの顔色もよくなりますね。
みんなでランチして、宿題や遊びに全力投球する夏休みの様子が楽しくてうらやましくて、自分もその場にいるかのような気持ちになれます。
七花ちゃんが、葉月くんを意識し出した頃にカフェテリアで飲んでいたアイスジャスミンラテもとても美味しそうです。
葉月くんが飲んでいたそれを、味見をするかと聞かれた七花ちゃんが真っ赤になって断ってしまう様子はとても可愛いです。
気になる相手が口をつけたものを、飲めない。純情な女の子の気持ちがとても伝わってくる、なんとも甘酸っぱいシーンです。
そのシーンの小道具として使われていたアイスジャスミンラテ。なんとも印象に残ります。
他にも、ブラックコーヒーを飲みすぎる七花ちゃんに葉月くんが勧めたたんぽぽ茶だったり、二人が仲良くなるきっかけになった葉月くんのお弁当のごろごろ豆の入ったポテトサラダだったり、このお話にはキーアイテムとして美味しそうな食べ物、飲み物が登場します。
男子高校生がお姉さんに前日のミネストローネを使ったリゾット作ったり、お友達の女の子に甘いお菓子を作ったり、なかなかできないですよね。
それができてしまうのが葉月くんです。はじめの頃は、キラキラピエロ王子キャラとして登場する葉月くんですが、もともと育ちもよく器用でなんでもできる性質なのですね。
お姉さん曰く「ちょっと調子に乗っていただけ」で。体に優しいものを作れる人は、人に優しくできる人なんだなと思います。
だからこそ七花ちゃんが荒れてブラックコーヒーをがぶ飲みしていたときも、体に優しいたんぽぽ茶を差し入れることができます。
お姉さんのために、美肌強化メニューの食事を作ることもできます。
テストで頭を使った七花ちゃんのために、ブラウニーを甘めの味付けにすることも忘れません。
気遣いのできる、とても優しい男の子です。
もともとの性質に、七花ちゃんという自分を変えてくれた女の子との関係も加わって、葉月くんは本当の意味でキラキラ輝く男の子になります。目をみはるほどの成長っぷりです。
自分の中に、どんなやっかいなモンスターがいるのか。自分でも知らなかった、自分の中の自分。主人公二人はそれに気づき、見つめ、向かい合い、成長してゆきます。そしてその傍らには美味しい食べ物や飲み物があります。
ですから、読んでいてとてもわくわくします。この展開はどうなるんだろう、次はどんな食べ物が出てくるんだろう。葉月くんの作る今日のおやつは何だろう。ページをめくる手が止まらなくなります。
テンポよく進むのですが、とても平和な可愛いお話です。どこかホッとするような、優しい気持ちになるような、読後はとても穏やかな心でいられます。
登場人物みんながほんわかしているからでしょうか。話の作りがしっかりしているからでしょうか。安心して楽しく読めるお話です。
何度読んでも飽きません。そして何度も葉月くんの料理を真似して作ってみたくなります。
こうしている間にもまた読みたくなってきました。