高校生の時に、路上で倒れた人に困って助けを求めていた佐倉七瀬が、当時医師の研修生だった天堂浬(てんどうかいり)に一目惚れをして、ナースになるべく看護大学を卒業し、天堂のいる病院に就職したものの、あっさりと振られてしまいます。
それでも諦めずに「弟子にして欲しい」という佐倉の態度に天堂はどんどん惹かれ始めます。
第1巻で、すでに佐倉の一途さに天堂は惹かれているのですが、自分で佐倉を愛し始めていることについては気がついているものの、自分の心の中で確信が得ていない描写があって、うずうずさせる様子が読者を悩ませます。
佐倉七瀬については、よく少女漫画にありがちな「好きな人への一途さ」がかなり長く連載開始時は5年間天堂だけを思い続けています。
普通の女の子なら5年間一目惚れした男性に対して一途にいられるということは少ないです。
反対に天堂はというと、恋愛については疎いようで実はしっかりと恋愛はしていて、悲しい過去を持っています。
大学時代に知り合い、病院で再開した彼女を難病で亡くしています。その時から、何か人生について、恋愛についてどこか冷めている部分があります。
しかし、佐倉七瀬との毎日のやり取りの中で、佐倉なら自分の弱さや何もかもをひっくるめて受け止めてくれるのではと気がつき、第4巻で留学話が本格派して、翌日には海外へ留学するという日に、佐倉の「離れたくない」という雨の中での涙で、佐倉がいかに自分の心の奥まで入って、自分にはいなくてはいけない存在かを知るシーンは、ようやく二人の心が通じ合ったと嬉しくなりました。
第5巻で、御曹司の入院で佐倉は天堂いる病棟から離れてしまい、御曹司との会話の中で「いつの間にか思うようになったんですよ。実は貴重な存在じゃないかって」というセリフがあります。
第5巻では、第1巻とは異なり、佐倉は天堂にとってはかけがえのない貴重でそして手を話すことができないという存在に切り替わっている、すなわち佐倉が思い続けた恋心が見事に天堂の心に入っているということがはっきりと出ています。
御曹司の入院の中で、自分を思い続けてくれている佐倉に何もしてやれていないという天堂の悲しそうな顔も忘れられません。
年が離れていること、医師だから緊急の呼び出しで何もしてやれていないこと、男として御曹司が全てやったこと、例えばどこか遊びに連れて行ってやれていないという天堂の苦悩のシーンもどこか読んでいる女子をきゅんとさせてしまいます。
天堂は第5巻では31歳、佐倉は24歳と離れています。佐倉は全く年齢面は気にしていなくて、天堂が所々で見せる優しさや温かさを知っているから年齢差なんて全く無視です。
恋愛漫画では、最近年の差が離れたカップルの話は多く出ていますが、この作品については、年齢差はあるもののそれほど気にせずに読むことができる作品です。
キャラクター設定は佐倉がお酒を飲むと酒乱でとんでもないことをしてしまうという設定はとてもユニークで、呼吸器科で長年勤めた先生が退任するパーティーで酔っ払ってしまう話や、天堂とついに恋人同士になれたのに、何も進展しないので同じ職場のナースと飲み会に行って、酔っ払ってしまいとんでもないことを天堂に話してしまうという話はとても面白く、さらに天堂との恋愛関係を深める結果になったので微笑ましいエピソードです。
第5巻では、ついに天堂が二人で温泉旅行に行こうという話が登場するのですが、天堂が旅館で急病人を助けたことから、佐倉の中でモヤモヤ感を作り出しますが、天堂が自分が急病人を助けたことが悪かったという反面、自分は佐倉がどんな姿であれさ佐倉だけだという話も微笑ましくて、大人向けの女性コミックではありますが、「女性の一途な思いは岩をも砕く」というのを漫画の世界で繰り広げてくれている作品です。
まだまだ連載は続いていて、様々な脇役が問題を広げる中、二人の関係はどんどん深まる作品で、最後は結局どうなるのかとハッピエーンドで終わって欲しいと願っています。