WHITE NOTE PAD、1巻 感想
※ネタバレ注意です※
ヤマシタ トモコ先生が描く、人格入れ替わりドラマです。
男女の人格が入れ替わるというのは、わりとよく見る設定ではあると思いますが、17歳の女子高生と38歳の中年の男性の入れ替わりであること、
二人には何の接点もなく、ある朝起きると突然入れ替わっていたこと、
そして入れ替わって一年が経ってから物語が始まることが、非常に新鮮に感じました。
お互い全く知らない者同士であった為自分の体との再会に一年もかかり、なぜ入れ替わってしまったのか、という謎は追及されません。
時間は戻りませんし、無意味なのでしょう。
ではどうすれば元に戻るかを探そう、ともなりません。
生きていく為には働かなくてはいけないので、元女子高生だけど今は中年男性の体の葉菜(はな)は、元中年男性だけど今は読モの木根さんに編集部の雑用係のお仕事を紹介してもらい、少しずつ現状を受けれていきます。
何ともこんがらがってしまいますが、それぞれ人格の名前で呼びたいと思います。
なぜ入れ変わったか、どうやって戻るかではなく、入れ替わってしまったことによるそれぞれの苦悩と、受け入れ方にスポットが当たっています。
初めは、上手く進んでいたのは木根さんでした。
男が女に・・・は難儀なことも最初から多々あると想像できますが、38歳が17歳に、は嬉しく思っても仕方ないことなのではないでしょうか。
「最強だ」
木根さんはそう思い、楽しんで生活し、容姿を磨いて読者モデルになったようです。
一方、葉菜はとても大変だったでしょう。
記憶喪失扱いをされ、当然仕事なんて出来ません。
人生を奪われたという気持ちが最初から強かったのは葉菜のほうです。
木根さんが言うような、カラッポな人生なんかじゃありませんでした。
辛くて仕方なかったと思いますが、周囲の助けに恵まれ、何とかやってこれたようです。
それでも木根さんと再会して編集の仕事に触れ、葉菜は「わたしも変わりたい」と思うようになりました。
「中年男性にまれに見る素直さ」「少女みたい」「かわいい」と評判も上々です。
亭主改造計画という、木根さんを中心にした新しい企画も始まるみたいです。
反対に木根さんは男女の感覚の違いで、仲間内からあまり快く思われていないことが浮き彫りになります。
ああ、そうだろうなあ・・・、と納得してしまいました。
木根さんは38歳の中年男性。
若い女の子の読む雑誌をちょっと小バカにしてしまうことだってありますよね。
そして木根さんには好きな女性がいました。
でも葉菜の体で再会した時には親友の彼女に・・・
木根さんは徐々に追い込まれている気がします。
さみしさを埋める為なのか特別好きでもない男の子と体を重ね、「絶対同じ失敗はしない」と。
葉菜は自分の人生は奪われたけれど、木根さんの人生を奪っているのは自分だと思い始めています。
さらには、私の人生はカラッポなんかじゃない、そう言い切ることもできなくなっています。
二人の記憶が混同しているようなのです。
混同ではなく、記憶も入れ替わっていっている、と言ったほうが正しいのでしょうか・・・。
葉菜は、もう元に戻るという希望が感じられません。
「今のわたしは元のわたしと違うもん」
もはや全てがどうでもいい、そんな風に思ってしまっているのでしょうか。
木根さんはさみしさを抱えています。
戻りたい、けど現状は楽しくもある。
だけど、自分が誰だかわからなくなるのはこわいと言います。
二人の行き着く先に幸せなんてあるのでしょうか・・・?
2巻でどのような展開になるかが、全く想像できません。
発売されれば、すぐに購入して読むと思います。
この1巻はすぐに電子版も配信されるようですし、お勧めのまんがです。