暗くて霊感があると思われている少女、黒沼爽子は、みんなに貞子と呼ばれています。
見た目が有名なホラー映画のキャラクターに似ていることから付いてしまったあだ名と嘘の噂。
3秒以上目が合えば不幸に合うとの噂もあり、学校のみんなからはいつも遠ざけられ、友達はいません。
しかし本当の爽子は、純粋で心優しく、暖かな家庭で育った普通の高校生でした。もちろん霊感などありません。
友達がほしくて、いつも勇気を出して同級生に話しかけますが、周りの反応は変わりません。
一生懸命クラスに馴染もうと努力する爽子の姿を見ていると、心の底から応援したくなります。
性格が穏やかで、かわいいものが好きで、ものすごく個性的な絵を描いたりする、そんな見た目とのギャップに爽子を好きになり、応援したくなってしまう要素がたくさんあります。
同じクラスに、誰からも好かれる風早翔太という男子がいて、爽子の事を気に掛けてくれます。
クラスに馴染めない子をほっておくことができない性格なのだと彼を知る人は言いますが、本当にそれだけなのでしょうか。
ここから爽子と翔太の恋が始まります。
爽子の努力をちゃんと見ているのが翔太です。初めは、クラスから浮いている爽子をみんなに溶け込ませる事が目的だったのかもしれません。
けれど、何をするにも一生懸命で、愛に満ちた爽子と過ごす内に、恋心が芽生えます。
翔太と接することで、さらに頑張ってクラスに溶け込もうと積極的になる爽子。
そんな自然にがんばる爽子に、同じクラスの矢野あやね、吉田千鶴が心を打たれ、友達になります。
また、翔太と千鶴の幼馴染の真田龍も一緒に主に5人で高校生活を過ごすようになります。
そして翔太との恋。爽子は家族以外の人から好かれたことがないまま高校生になっています。
自分の事を好きになってくれる友達の存在は信じられるようになりましたが、自分に恋心を抱いてくれる人などいるわけがないと思っています。
翔太が遠回しに気持ちを伝えても、爽子は友達としての「好き」であると信じて疑いません。
そんな日々が過ぎていくと、だんだん翔太にも焦りがでてきます。
黒沼の事を好きになる奴なんてたくさんいる、と焦れて、爽子に告白をします。
その告白をクラスメートに見られてしまい、自分といるとその人の株を下げることになるとその頃思い込んでいた爽子は、咄嗟に翔太との関係を否定してしまいます。
翔太は念を押して気持ちを伝えますが、爽子は自分の好きと翔太の好きは違うと答えてしまいます。
自分の好きは、恋心なのだから・・翔太の好きは友達としての好きなのだから・・と心の中で思います。
翔太は爽子にどう接していいかわからなくなり、距離を置くようになります。
爽子への恋心をあきらめるのか、もやもやした気持ちで過ごします。
一方、爽子は翔太とのギクシャクした関係に胸が締め付けられる想いでいました。
千鶴から、爽子は自分の事を好きになってくれる人がいないという自信の無さ、そしてそれが当たり前の考えになってしまった事を友達として叱られます。
自分の事を好きでいてくれる人がいる、、そう感じられた爽子は、勇気を出して翔太に自分から気持ちを伝えます。
ここのシーンが1番好きです。爽子の焦燥感、伝えたい気持ちが溢れます。
読んでいると呼吸が早くなる自分に気付きます。爽子のセリフ1つ1つを、ゆっくりと読みます。
翔太に気持ちを伝え、それが届いたとき、涙無くしては見られませんでした。
すごく遠回りをして、いろんな誤解もあって、気まずくなって…
届け、届け、君に届け!と気が付けば呪文のように唱えていました。
やっと届いた…翔太のセリフと、読み手の気持ちが重なり、どっと力が抜けました。
また、入学当初ずっと一人だった爽子が、一つ一つの勇気から、気が付けば夢だったクラスに溶け込むことが出来た時、心からがんばったね!良かったね!と清々しい気持ちになります。
ただの恋愛漫画ではなく、10代のもう戻ってはこない青春が全て詰まった漫画です。
友情のすばらしさ、人を好きになる切ない気持ち、いつか離れ離れになってしまう苦しさ。
読んでいて苦しくなることはたくさんあります。登場人物の気持ちがドンっと響いてくるからです。
自分も仲間になったかのように、喜び、悩み、苦しみ、泣く。そんなことができる漫画なのです。