「お父さん、チビがいなくなりました」などの作品を手掛けた西炯子先生による作品です。
「初恋の世界」はとある町のコーヒー店が舞台となっています。
主人公の小松薫は、40歳になったばかり。
東京でカフェの店長として働いていました。
物語は小松が40歳の誕生日を迎え、カフェのスタッフにお祝いされているところから始まります。
実は彼女、独身。
スラっとしていて、眼鏡をかけた綺麗な彼女ですが、実は6年ほど彼氏はいません。
どうやら過去に結婚の話も出たことがあったようですが、他に好きな女性ができたと言って別れたり、自然消滅したりと、なかなかご縁がなかったようです。
彼女が働く「モリノカフェ」。
ここはフカフカなソファーと、素敵な音楽が流れ、美味しいコーヒーを飲みながら贅沢な時間が過ごせるというコンセプトの提案型カフェ。
彼女の淹れたコーヒーはファンが付くほどの美味しさで、社長も「美味しい」と褒めてくれるほど。
このままこの勤務先で、ずっと勤めていくのかなと思っていた矢先、ある日、転勤の話が舞い込んできます。
それは、彼女の出身地・角島県にある支店への転勤話でした。
一年前に出店したものの、立地条件などにも恵まれていないようで、あまり業績が伸びていないとのこと。角島の土地勘がある彼女に何とか業績を改善してもらいたいという希望でした。
思わぬ提案に驚く小松。
はじめは断るのですが、よくよく考えてみるとつい最近断捨離をしたばかりで荷物が少なくなったばかり。
また、独身の彼女には付き合っている彼氏もおりません。
住んでいる部屋の更新も来月に迫っていました。
タイミングとしてはとても良い時期…。
断る理由がありません。
そんなわけで、40歳に突入した彼女は再び生まれ故郷である角島へと戻ることとなったのでした。
地元に戻るとなると、やっぱり過去の自分を知る人が多く住んでいる場所に身を置くことになります。
この物語は、ある意味過去との対峙がテーマになっているのかなと感じます。
はじめはそれが恋愛なのかな?と思っていましたが、様々なものを抱えていることがだんだん分かります。
小松の過去を知る人物として、3人の中が良かった同級生が登場します。
一人は毎年誕生日に連絡をくれる中松香織。
今では2人の子どもを持つ主婦です。
二人目は大浦修子、中学校の教師をしています。
また彼女も独身。
三人目は黒岩智子。
バツイチの彼女は現在、事務員をしており、高校時代とは打って変わって現在ではパーマをかけて垢ぬけた様子です。
彼女たちは学生時代、BLの漫画をひっそりと描いていた仲間。
みんなそれぞれ違う性格ですが、好きなモノが同じであったことから仲良くなるように。
小松が帰ってきたことで、再び4人そろって集まり当時を懐かしみます。
ただ、やっぱり大人になって変わってしまった部分もあるようです。
学生の頃とは変わって、大人になるとうまくいかないことも多々あるよな…と思ってしまいます。
また、やはり結婚観などはそれぞれ違うようで、小松も彼女たちと話すたびに自分の過去を振り返っていきます。
過去の回想も多々ありますが、彼女には現実で起こっている問題がありました。
それは勤務先となった角島にあるカフェ。
なんと、そこは本店とは違い、喫煙OKで、なぜか本店にはないランチメニューが多々用意されていました。
そこはどうみても本店とは違うカフェに…。
このお店を仕切っていたのは、出向していた社員・鈴木ではなく、小鳥遊というアルバイト店員でした。
彼がランチメニューを作り、コーヒーは一応本店で用意した豆を使用して飲み放題のサービスを行っていました。
彼のおかげで、業績も少しずつ上がってきているようでした。
ただやはり本店の意向とは全く違う店内の様子に、小松は怒りを溜めていくのでした。
店長よりも店長らしい小鳥遊という謎の青年。
身元も謎で、物語が進むにつれて少しずつ分かっていきます。
なぜだか美味しいナポリタン。
料理の手つきも妙になれています。
履歴書も提出してもらっていなかったため、年齢すら初めは分かりませんでした。
小松に店が引き継がれることになりましたが、彼女の方針に逆らう小鳥遊。
勝手に働き始めたのだから、勝手に辞めればいいのに。
と読み始めた頃は思っていました。
でも、なんとなく小松が彼を意識するのと同時に読んでいる方もその存在が気になるようになっていきます。
やっぱり顔がイケメンだから?
40歳を迎え新天地で、言うことを聞かないアルバイトに手こずる小松。
恋愛とは遠ざかっていた彼女が新天地でどのように変わっていくのか、気になる漫画です。
また読んでいると、自分の人生も考えさせられてしまいます。
友人たちの目線になっても、見方が変わるかもしれません。
初恋の世界というタイトルの意味が、読んでいる内に分かってきます。