7SEEDSは、冷凍保存された若者たちが未来の地球で解凍されてサバイバルをして生きていく物語です。
隕石が衝突して現代の世界が滅亡することを知っていた政府関係の一部の人たちによって、地球上に人類を残すために健康で優秀な若者たちが本人の知らない間に冷凍保存されます。
若者たちが解凍されて目覚めてみると、電気も建物もないジャングルのような世界が広がっているところから物語が始まります。
私がこの物語に引き込まれたのは、このジャングルのような世界で生きていくための知恵のオンパレードに感心して「もっと知りたい」と思ったからでした。
例を挙げたら切りがないですが、海を移動するなら焦るあまり闇雲に前後左右もわからなくなる暗い夜に移動するより昼まで待つこと、襲いかかってくる生物はただ怖がるよりもその特性をよく観察して逃げ切る方法を考えること、地形や土や植物を見てキャンプや居住に適した土地なのか推察することなど、便利な現代に当たり前のように住んでいると改めて気づかされることばかりです。
海で遭難したり、大きな未知の生物に襲われたり、家を建てる場所を求めてさまよったり、読んでいる私も登場人物たちと一緒に一喜一憂するのですが、優秀な若者たちがいろんな知識を出し合い困難を乗り越えていく様子は爽快感さえ感じました。
この物語の魅力はもう一つあって、登場人物の一人一人が際だっていることです。
成績優秀でリーダーシップはあるけど威張ってしまう者、少し控えめでチーム内のクッション役になる者、音楽や絵画など好きなことしかやりたくない者、みんなのためと頑張るあまり独走してしまう者など、実際の世界でも「いるいる」と思うような人物たちです。
環境としては現代の世界が滅びた後という設定ですが、人物たちは身近に感じられるので物語に入りやすいです。
若者たちは、他の国については詳しくは描かれていませんが、日本では7人チームが5つありました。
春、夏A、夏B、秋、冬の名前がついていました。
各チームの解凍される場所は北海道から九州まで日本全国に散らばっています。
それぞれ健康で優秀な若者が選ばれていますが、夏Bチームだけ健康ではあるものの少し問題児とされている集まりです。
優秀なだけでは生き残れない環境であることも考慮して、問題児ならではの発想や行動力に期待して作られたのが夏Bチームです。
夏Bチームはナツ(女)、嵐(男)、蝉丸(男)、ちまき(男)、まつり(女)、ほたる(女)、モズ(男)、ぼたん(女)です。
ナツは引っ込み思案の読書好きな女子高生、嵐は彼女を守るために暴力沙汰を起こしてしまった高校生です。
蝉丸は母子家庭で育った少し荒々しい高校生、ちまきは芸術が好きなマイペースな大学生です。
まつりは人目を気にして明るくふるまう性格で恋愛が大好き、ほたるはまだ12歳だけど勘が鋭い女の子です。
モズは謎が多く神出鬼没だけれど冷静にみんなを助けてくれて、ぼたんは元警察官でみんなをまとめて導きます。
私はこの夏Bチームが一番好きです。
他のチームは、食料を確保するために狩りをしたり農耕を始めたり、とても真面目にがんばっています。
みんな優秀で行動力もあって頼りがいがあるので「すごいな」と思います。
ただ、夏Bチームは少々問題児ですから発想が他のチームとちがいます。
毎週お楽しみ会のようなものを開いて、各自出し物をします。
リンボーダンス、手相占い、あやとりなど披露して楽しみす。
蝉丸とナツの漫才が一番好きです。もちろんナツは蝉丸に強引に誘われて戸惑いながら漫才をしています。
適当なセリフの多い蝉丸に、読書好きで言葉に敏感なナツは翻弄されてばかりです。
さらにおもしろいことに、夏Aチームが夏Bチームの存在をこっそり見つけたときに、夏Bチームはお楽しみ会の漫才をしていました。
夏Aチームだけは、人類生き残り計画のために幼少期からサバイバルの勉強と訓練ばかりしてきましたから、初めて見るお楽しみ会の様子を「あれは何かの罠だろう」と怪しみます。
5つのチームの中でも特に真面目で優秀な夏Aチームと、適当で自由奔放な夏Bチームの対比はおもしろいです。
現代の世界が滅んだ地球で生きていくという壮大な物語ですが、40人の登場人物にそれぞれ個性があって、いろんな局面でその個性が活かされていくところも読み応えの一つです。
豊富な知識がなくても、それを実践する行動力がなくても、ちょっとした言葉が誰かのヒントになったり、存在だけで誰かの心の支えになることもあります。
お互いを大事に思い、一丸となって生きていく登場人物たちが羨ましく思いました。