人魚のピアがとても純粋でかわいらしく、詐欺師のグリーンですらもそのピュアさにほだされてしまい、ピアの笑顔を心底守りたいと思うようになっていくのが読んでいて心があたたかくなりました。
ピアは自分が金儲けに利用される存在である事や、ピアにうりふたつの公爵夫人の娘として身代わりさせられる事になっても、周りを疑ったり、自分がどうして辛い目に合うのかと恨みがましく思ったりする気持ちは全くありません。
グリーンを自分の王子様だと信じ、淡い恋心で一緒についていく姿は本当に健気です。
グリーンを含む周りの人達も根っからの悪人ではなく、それぞれの事情があってすさんでしまったり、悪く見えるような言動を取ってしまったりするというのもとても人間らしく、あとから読み返してみて色々な角度から楽しめるストーリーだなと思いました。
本当にお金がなくて、人魚であるピアのうろこはとてもキレイで価値があり、うろこを取るという行為はピアにとってかなりの痛みを伴い、だんだんと衰弱していくのですが、みんなでおいしいごはんを食べたい一心でピアは倒れる寸前までひたすらグリーン達にバレないように行動していました。
その優しさも、ピアが育った環境だったり、ピア自身が持つ本当に本当にまっすぐな心なのでしょう。
人魚達がいる海から人間のいる街へ、ひとりで来たピアの目に、格好の良いグリーンは本当に王子様に見えたんだと思います。
グリーンはそのピアの思いを最初は利用しますが、そのうちピアといる事が楽しくなり、ピアのその優しさやまっすぐさ、あたたかさが愛おしくなってしまいます。
自分が犠牲になってもいいと思えるくらいに。
詐欺師として生きてきたグリーンにとって、ピアの存在は人生のターニングポイントでした。
ピアがいなかったら、グリーンはあたたかさも幸せも知る事は出来なかったでしょうし、自分を捨てた母親と和解する事も出来ませんでした。
ピアがいなければ、ピアの持っている薬をグリーンの母親に飲ませる事が出来なければ、グリーンは母親を憎んだままだったでしょう。
パールガーデンに出会ったのは子供の時でしたが、時を経て何度か読み返すたびに違った視点で見る事が出来、本当にこの作品に出会えてよかったと思う次第です。
周りの気持ちをこれだけあたたかく変えてしまえる力を持つ人は、どのくらいいるのでしょう。
物語だけではなく、そういう人は確かに存在します。
辛くても苦しくても、大事なものを見失わず、大好きな人に心からの笑顔でいられる、そんなピアが本当に大好きです。
ピアは人魚の姉妹の末っ子なのですが、お姉さん達にもとても愛されているのも好きでした。
口やかましかったりするお姉さん達ですが、それは心配からだったりするので、もちろんピアはうっとおしがったりする気持ちを持ったりしませんし、見ていて本当にピアの事が好きで好きで大事でたまらないんだなと、ほっこりします。
絵柄が洋風である事も、よりグリーンの格好良さを際立たさせています。
グリーンのピアスは母親を真似て無理矢理自分であけたものなのですが、子供の頃のグリーンは自分を捨てた母親をそれだけ大好きだったんだなと痛感するエピソードでした。
人魚姫がモチーフでもあるので、最終的にはピアは人魚から人間になる事が出来、人魚と人間が結ばれなかったら人魚の心臓は破裂してしまうという呪縛から解き放たれるのですが、雑誌で読んでいる時、どうなってしまうのかと毎月ハラハラしていました。
これだけ周りの人達が大好きで大事にしているピアに幸せになってほしいし、過去に色々抱えているグリーンにも幸せになってほしいと願いつつページをめくっていました。
グリーンに向かって幸せそうに笑うピアを見て、グリーンがピアの笑顔を守っていこうと誓うシーンでお話は終わります。
漫画でありつつ、長めのおとぎ話を読んでいるような感覚で、いつまでもいつまでも心に残る作品です。