乙嫁語り、8巻 感想
※ネタバレ注意です※
いくつかの心待ちにしているコミックの中でも、文句なし一番首を長くして待っていた新刊です。
7巻のあとがきにあった通りアニス編で始まります。
アニスの夫が娶ったシーリーンは、アニスの姉妹妻。
そんな3人のその後の生活が見られます。
正直に言うと、どんなにアニスとシーリーンが仲の良い姉妹妻であったとしても、いつか、どこかで軋轢を生むものだと思っていました。
が、そうはならず、むしろ、アニスと二人の夫・・・という感じです。
無邪気なアニスを夫と姉妹妻が二人で見守っていくような雰囲気で終わり、大満足でした。
続いてはメインキャストでもあるパリヤ編。
バダンとハルガルの襲撃を受けた村では、建物の損壊がひどく、助け合って復興に努めています。
そんな中、家が全壊したパリヤの家族はアミルの家へ居候することとなります。
縁談の話も良い感じに進んでいたパリヤでしたが、今まで作り貯めしていたお嫁入り用の布の多くを襲撃で失ってしまう事態に。
もともと刺繍が得意でないパリヤが、アミルの祖母を含めアミル家族の応援を受けて奮闘します。
頑張って作っても数年かかるという嫁入りの布ができあがるのをお相手候補のウマルは待ってくれるのか、縁談はどうなるのか、は次巻以降へ持ち越しとなりましたが、父親と一緒に村の復興を手伝いに来てくれたウマル。
そろばんの特技を披露したり、前回のパリヤとの軽いケンカ(?)もサラリと過去にしていたり、とても好青年なのでパリヤの準備を待っていてくれそうな予感がします。
そしてアミルの家ではもう一つ。
アミルと競争をして何でも言うことを聞いてもらえる権利を手に入れたカルルクの願いは、アミルに弓の使い方を教えてもらうことでした。
カルルクの言葉を借りると、アミルを見て、というよりはアミルの兄を見てうらやましくなったようですが、
一番の目的はもちろん、アミルと同じ時間を共有すること、ですよね、絶対。
いつまでも暖かい穏やかな二人には不安のかけらもありません。
今巻の中心はパリヤでした。
自己嫌悪が激しく、不器用なパリヤ。
誰でもその中に自分の一部を重ねてしまいそうなキャラクターで、何でもでき前向きで明るい主人公アミルとは正反対です。
アミルには到底及ばないと考え、村で評判の良いカモーラを目標に素敵な女性を目指すパリヤは、アミルの仲介でカモーラとも友情を結ぶことができました。
すばらしい友人に囲まれて幸せな結婚ができますように、と願ってやみません。
でも、パリヤが遠くの村にお嫁に行ってしまうと、アミルとパリヤの絡みがなくなってしまうのでは?と少し不安ではあります。
異国の異時代の物語なのに、その中には今の自分と同じような思いや人間模様があることを実感させてくれるこの本は、長くそばに置き、繰り返し読みたい一冊です。