颯爽な家政婦さん 感想
※ネタバレ注意です※
この巻から出版社が変わりましたが、家政婦里さんシリーズの四作目です。
「颯爽な」のタイトル通り、気持ちがすかっとする話が二作品収録されています。
「お玉杓子定規」
伝説のSクラスと呼ばれた家政婦(現・家政婦協会の協会長)の娘である多賀恵は、四角四面で杓子定規な性格で家政婦として最低ランクをつけられ、Sランク家政婦の里さんの特別研修を受けることになります。
はじめは多賀恵の真面目というよりは融通のきかなさ、そのくせ不倫をしていたり、家政という仕事への考えの甘さなんかが鼻につくのですが、読んでいくほどに愛すべきみっともなさや素直さが出てきて可愛く思えるようになりました。
里さんの綺麗で手早い家事のコツが描かれていて、靴磨きや瓶の洗い方など実際に試してみたくなる小技も沢山ありました。
不倫男のようななんにでも卵を乗せとけば満足系男子は現実にいますよね。
好きな間は可愛いけど、気持ちが離れると子供っぽい薄っぺらさを感じてしまうあの感覚がリアルだなと思いました。
「サンドローズ」
認知症で王子様を待つ乙女のようになってしまった姑、姑のイビリと介護でうつ病になった奥さん、外に愛人を作りろくに帰ってこない夫、夫の差し金で奥さんに迫るヘルパー間男。
書き出すと非常にドロドロした話っぽいのですが、モロッコの王子様を待ち続ける姑の妄想はちょっとしたロマンス小説のようで照れ笑いになるし、奥さんになかなかクスクスを食べてもらえない珍しく苦戦する里さんと、そのクスクスの残りを美味しそうに食べる家政婦協会室長の万里とのやり取りはほんわかしました。
嫁イビリや認知症や不倫、DVなど扱うテーマはちょっと重いのですが、生々しさはあまりなくてどことなく切ない気持ちにさせられます。
さっぱりと髪を切った奥さんの笑顔は里さんの悪戦苦闘が報われたようで印象的でした。
メインの料理はモロッコ料理ということで、クスクスにハリラにミントティーと異国情緒たっぷり。
でも私は菊のおひたしと炊きたてご飯のおにぎりにそそられました。
里さんの大きい手で握られたおにぎりはとても美味しそう!
夜に読んだらお腹が空いて困りました(笑)
巻末レシピはライ麦のクロワッサンスコーン、ゴーリングホテルのスコーン、さつまいもと鶏のクスクスでした。
食べたことのない外国の料理を作るのってハードルが高いのですが、里さんのレシピを見ていると本当に美味しそうなので挑戦してみたくなりました。