今どきの若い人達は、少女漫画の女王と呼ばれた方を知っているでしょうか。知らないかもしれませんね。
女王・一条ゆかり先生は休業されてから、本格的な漫画の作品を出してらっしゃらないので、知らなくてもしょうがないです。
そんな女王・一条先生が描かれた代表的な作品が『有閑倶楽部』です。先生の作品としては1番長く続いたシリーズですし、何世代にもわたって読まれている作品です。
全巻並べてみてまず気づくのは、絵柄の変化です。漫画の技術についてはよくわかりませんが、同じ先生が描いているとは思えないくらい変わっています。それがおもしろいです。これは先生が意識して変えていたそうで、つねに研究と努力を怠らなかった一条先生の、だからこそ少女漫画の女王と言われる存在になれたのかということが、少しわかるような気がします。
絵を見ていて楽しい理由は、絵柄の変化だけではなくそのときどきでキャラクター達が着ている服装にもあります。その当時を知っている人が見たら、その時代にはやっていたファッションを思い出すことも多いのではないかと思います。『有閑倶楽部』の主役達はみんなお金持ちの家の子なので、センスも磨かれているはずですから(そうでもないキャラクターもいますが・・)、彼らや彼女らのファッションは今でも参考にすることができるかもしれません。
このシリーズの中でケータイやパソコンが出てくるのはけっこう後です。お金持ちの子であってもスマホどころかガラケーもない、ノート型パソコンもない、コンピュータはものすごく高くて一般家庭で所有できるものではなかった・・という時代から続いていた作品だということを頭に入れて読むと、より深く楽しめると思います。
あらためて主人公たちを紹介すると、家柄がいいセレブだったり親が財を築いた大金持ちだったりという、いったいいくらお小遣いをもらっているのだろうと想像してしまいます(月々決まった額をもらうのではないかもしれない)。子供の頃に読んだときはとにかくそれがうらやましかったです。気が向いたときに国内外に自由に旅行ができる子供達(子供達といっても高校生なので知識と行動力はあります)、それに自家用ジェットも持っているし・・という一般庶民とはほど遠いセレブっぷりが気持ちいいです。修学旅行はヨーロッパ旅行で、ガイドさんよりも詳しい学生達です。
このシリーズの中には、そんなセレブっぷりを堪能できる話がたくさん出てくるのですが、私が1番好きなのはスイスのスパに行く話です。女性しか入れないゴージャスなスパで起こる事件に巻き込まれる話で、それでは男性陣の活躍が見られないと最初は思ったのですが、それがそうではなく・・。こういうスパに行ってみたいと思う女性も少なくないと思います。そういう女性としての欲もかきたてられる話でした。
この作品を読み返しながら、いつの間にか主人公達よりだいぶ年齢が上になってしまった私としては、主人公達が学校を卒業してからの話も少し読みたいですが、先生自身がそういう設定では描かないとおっしゃっていた記事を読んだことがあるので、たぶんないでしょう。でも大人のほうが主人公達が自由に動けて楽しくなりそうな気もしますが・・。その後のストーリーを自分なりに想像したこともありますが、やはり先生みたいにしっかりとした話の展開を考えることはできません。でもこうして想像し続けるのも悪くはありません。リアルタイムでこの作品を読んでいた友達とも話し合ってみたいものです。
『有閑倶楽部』を今読むとしたら、文庫版のほうが手に入れやすいかもしれません。私は単行本のコミックを全巻持っているので、それはちょっと自慢したいです(笑)。