この作品『赤白つるばみ』は上下巻で、下巻で登場人物がそろうのでこちらのほうが面白いです。けれども上巻を読まないと意味がわからないところもあるので、上下どちらもおすすめです。
ファンタジックで非現実的な世界を描いでいるわけではなく、むしろどこかにありそうな世界なのですが(都心ではないけどローカルでもなさそうな町)、身近にこういう人達がいるかといえばいない…そういう登場人物ばかりです。
でも少し近いくらいの人ならいるかもしれませんが…。
好き嫌いの好みが別れる作品でかもしれません。私はとても好きです。
美大生の弟からはニートだと思われている兄(勤め人ではないだけで仕事はしています)、二人が思いを寄せるシングルマザーのヒロイン(帰国子女の語学力をいかして翻訳の仕事をしている)、彼女の3人の子供達(男女の双子と男の子の幼児)、人の声から色を見るアーティストの老婦人、兄弟の祖父、弟の美大の友達、みんな普通ではなくて個性がたっていて魅力的です。
ある意味魔性だと思われるヒロインはもしかしたら同性に嫌われるタイプかもしれませんが(作品の中でもそういうふうに描かれている)、それでも女友達はいますし本人は友達が少ないことを全然気にしていません。その姿勢はかっこいいです。
そんな彼女も自分に自信がなくなる場面があるのですが、この場面に共感する人は多いのではないかと思います。少なくとも私は何度もうなずきながら読みました。
ストーリーは上下巻を通じて、大きな事件が起こるわけではなくどちらかというと淡々と進んでいきます。
けれどそんな中でも、まったく何もないわけではなくそれぞれの考え方や感じ方の変化があり、この先どうなるのだろうという期待につながるのです。
現在雑誌で続編が連載されています。私は雑誌は読まずに単行本が出るのを楽しみにしています。
SNSでちょっと情報を目にしていますが、やはり実際に読まないとわからないです。
雑誌には他の作品も載っているし、それもおもしろそうだから読もうかなとも思うのですが…。
続きが気になる作品が多くなるのも大変です。子供のころだったらそれらを追って読んでいたと思いますけど。
下巻には数年後のヒロインと子供達の短編があり、それもおもしろいです。子供達の変化、この先どう成長するのだろうかと想像するのも楽しいです。それもいつか描いてほしいです。
描かれる線や背景、ちょっとした小物の描き方が美しいです。同じ作者の方の他の作品も少しずつ読んでいます。