山口県に住む高校生の小浜かよ子が主人公です。こちらの漫画を読んでいますと高校生の頃の青春時代が思い出され、胸がきゅんきゅんとなるのです。高校生の頃にタイムスリップしたような不思議な錯覚を覚えます。
自然豊かな山口県の田舎町で育ったかよ子は、絶世の美少女とまでは行かないかも知れませんが、ちょっと可愛くて「あの子かわいいね」と時には振り返られるような容姿であり、性格は純粋で素朴で優しくて、透明感のある女の子です。
どこにでもクラスに一人はいそうな雰囲気は親しみを感じました。言葉は方言(山口弁)が強くそれもまた素朴でとても素敵なのです。
かよ子が高校一年生のある日、同じクラスの紺野芳弘君という男の子に告白されるのですが、紺野君はサッカー部で男らしくて爽やかで寡黙な雰囲気を持っている人です。
告白をされた場所が学校の階段の所で、そのシーンの空気感から、かよ子や紺野君の心臓の音まで感じることが出来るような繊細なタッチで、自分が告白されているような錯覚を覚えました(笑)
最高です。
その後、2人はめでたくお付き合いをするようになるのですが、2人で学校から帰ったり、初デートをしたりして、なんとも言えない2人の緊張感が伝わってきます。
紺野君の友人である水谷輝哉は、いわゆるチャラチャラした雰囲気ですが
あ~私の同級生にもこういう人いたなぁと妙にリアルな感じがしました。かっこよくて、どこにもいそうなのになぜだか儚い雰囲気で、手が届きそうで
届かない人。
背景は山口県の山々があったり、田園があったり、夏のシーンでは虫の音まで聞こえてきそうで、作者の紡木たくさんらしい柔かく繊細な絵の数々と本当に素晴らしい画力に感動しました。
四季の景色、温度、風の匂い、青空や夜空の色、すべてが伝わって来るようです。
恋愛の良い所だけでなく、生きているからこそある、哀しみや切なさや、苦しみ、喜び、それぞれの家族や友人との悩みも描かれていて、きれいな場面だけでなく全部ひっくるめて人生とは美しいと感じる物語です。
飽きることなくどんどん引き込まれて読み進むことが出来ました。まるでノンフィクションのようなリアルさを感じます。
時代は昭和を感じる雰囲気で「テレフォンボックス」で電話するシーンや制服の短ラン?、ボンタンも懐かしさを感じずにはいられませんでした。
紺野君はサッカー部で、上を上を目指して練習に励む姿、それを応援するかよ子、たまらなく爽やかです。
高校生だったらこんな恋をしたかったなぁと思ってみたりしました。
紺野君はサッカーの全国大会を目指して並々ならぬ努力の日々を過ごしていたのですが、試合に負けて全国大会への道は絶たれてしまいます。一緒になって私も項垂れ放心状態になりましたたが、いや良く頑張ったヨ!!と絵に向かって励ましてしまいました。
高校3年になると、誰しも進路について悩む時期になりますが、紺野君は進学せず山口県を離れ東京に比較的近い神奈川県にある工場に就職をして、かよ子は進学をすることになり地元に残りたい気持ちと紺野君の近くにいたい気持ちで揺れており「2人はどうなっちゃうの~!?」とドキドキハラハラさせられました。色々山あり谷ありあったけれど2人は一心同体でしょう、と。
全く知らない2人なのに応援している自分がいました。
初めて全巻揃えたのが、こちらの「瞬きもせず」の漫画なのですが、1巻から最終巻まで素晴らしいと言える作品です。美しい漫画です。つまらない部分がひとつもなく、読み終わっても何回も読んでしまいました。物語の時代は変わっても、いつの時代になっても色褪せない名作だと思いますし、いつまでもずっと大切に持っていたい作品です。