主人公の正宗飛鳥は容姿端麗、文武両道、男の中の男と周囲から言われる高校男子です。
しかしそんな彼はお菓子作りに編み物、裁縫、そしてフワフワ、キラキラしたものが大好き乙女チックな趣味を持っています。
そのことは学校にも家族にも内緒にしています。
第1話でそんな飛鳥くんに運命の出会いがあります。
不良にカツアゲされている生徒を助けようとした女生徒を助けるために喧嘩の中に入っていった飛鳥。
見事に不良をやっつけて女生徒にお礼を言われます。
その子のかわいさから一目惚れをします。その子がこの話のヒロインの都塚りょうです。
都塚さんは警察官の父親と2人暮らしで幼い頃から武道を教え込まれた空手の達人です。
とてもかわいいのですが、男気溢れ、さっぱりとした性格の持ち主です。
飛鳥の乙女チックな趣味に驚く事なく、受け入れ、逆に料理などを教わるのですが、料理はからきしダメで、飛鳥の指導があってもケーキが王蟲になったり巨神兵になったりする話もあります。
物語は飛鳥が乙女チックな趣味を周囲に（特に母親に）バレないようにと奮闘する乙女コメディ漫画ですが、周囲にはじわじわとバレ始め、そのうちに次から次へと乙女チック趣味の仲間が登場し、登場する男子の女子力の高さに驚きと笑いが止まりません。
飛鳥の親友の橘充太は当初は尻軽のチャラ男で登場しますが、実は漫画家幸花ジュエルとして人気少女漫画「らぶちっく」を執筆。
その正体がわかるのはコミックス後半ですが、作品全体を通して「らぶちっく」という作品は飛鳥のバイブルとして扱われています。
実はその作品の主人公は飛鳥がモデルとなっているということも後半になって明らかになっています。
飛鳥のライバル、他校の多武峰くんというキャラクターは同じく文武両道で容姿端麗ですが、メイクに心惹かれているのですが、厳しい家庭に育ち、何事にも一番でなくてはならないという両親の教えのもと、メイクの趣味をひた隠しているという設定。
それも話の中で飛鳥を中心とした仲間たちにバレ、話の中で何度もそのメイクアップのクオリティの高さでピンチを乗り切っています。
「お前を蝶にしてやる」という上から目線の俺様メイクアップアーティストは、メイクされる側の人間をされるがままにさせるなかなかイケズなキャラクターです。
他にも花に愛を注ぐ黒川樹虎や少女的童顔を持つが強い男に憧れる有明大和、人気ヘビメタロックバンドのボーカル、ハナマサなど個性的な登場人物がたくさん登場します。
主人公の飛鳥を含め、みんな本当に好きな物を隠して悟られないようにも仮面を被って生活しているキャラクターばかりです。
しかもバレないように男の中の男になるために努力もして、周囲からは男らしいと思われるくらいハイレベルにまで上り詰めつつその姿は本当の姿ではないというのです。
少女漫画であり、乙女チックコメディ漫画なので軽快に気負わず読める作品ですが、深く読めば今よく叫ばれているジェンダーフリーを訴える作品ではないかと思います。
飛鳥は想いを寄せる都塚りょうのありのままを受け止める大きな心によって、徐々に乙女チックなものが好きでもいいんだ、それが自分なんだという風に変わっていきます。
そんな飛鳥を見て、周りのいわゆる女性的な趣味を持つ仲間たちが少しずつその趣味を隠さずに出せるようになってきます。
人気ヘビメタロックバンドのボーカル、ハナマサは実は飛鳥が好きな音楽「frafra」のボーカルで声変わりを機に解散。
コンビを組んでいた兄とは絶縁状態だったが、飛鳥と出会い、意気投合したことで兄と和解し、のちに乙女系ロックバンドを結成することでハナマサは自分の好きな乙女系ミュージックをすることが出来るようになった話はなかなか印象的でした。
また、飛鳥の父親は飛鳥が幼い頃、「ずっと女になりたかった」と言って家出。
母親はそんな父親の告白にショックを受けて飛鳥を男らしい男にしようと剣道などの武術を徹底的に習わせていました。
飛鳥の乙女チックな趣味を受け入れられない母親はいわばラスボスのような存在。
なかなか理解を得られず悩む飛鳥の前に、物語後半から登場したパティスリーのシェフ。その乙女チックなケーキを作るシェフこそ幼い頃出て行った父親でした。
最後は母親と父親は和解し、飛鳥はありのままを受け入れてくれる協力者をどんどんと増やし、都塚りょうとも結ばれてハッピーエンドというお話です。
数話完結のコメディ漫画ですが、全体的に筋が通っていて、ありのままの自分でいいんだ。と思わせてくれる作品だと思います。
