午前３時の無法地帯は、ねむようこさんが原作の少女漫画です。
主人公は、パチンコメーカーの広告やポスターを制作するデザイン事務所「P-DESIGN」に入社した「七瀬ももこ」という女の子です。
このP-DESIGNは、超がつくほどの激務な会社なのです。日付が変わるまで事務所の電気がついているのはもちろんのこと、タイトル通り、午前３時まで働き続けているような会社です。
ももこはそんなことも知らずに入社、同期も辞め、多忙でなかなか会えなくなった彼氏に浮気され、会社の人にも怒られてと散々な思いをしながら仕事を続けていたのです。
ももこは、何度も会社を辞めようと思ったり、浮気した彼氏許して自分が傷ついたことをなかったことにしようとしたりしていました。しかし、会社での上司や先輩との関係、同じビルで知り合った男性との関係が、彼女を強くし、自分を大切にすることを学んでいきました。
私がこの漫画で好きな場面は、深夜にももこが一人で仕事をしているとき、同僚の営業さんに「大丈夫じゃないときは大丈夫じゃないと言え」と言われ、今までの辛い思いが溢れ出て泣き出す場面です。
浮気したのに何事もなかったかのように、ももこの元へ戻ってきた彼氏に、ももこは深く傷ついていたことを自覚した瞬間だったのです。
彼女の心が傷ついた描写がとても印象的でした。
彼女の心の場面に変わり、ももこと同じ姿をした子がももこに「ここ、怪我してるよ？」と諭されるも、「怪我してないもん！」と言い返し、「でも、血が出てるよ！」「出てないよ！」と、二つの心が言い合いをしている場面です。
心の葛藤や、本音と建前が戦っている感じが独特な描写で描かれていました。
元彼と別れた後、彼女が次に恋をした「多賀谷さん」は、別居して行方知らずの奥さんを持つ、同じビル内の会社に勤める男性です。
物腰がとても柔らかく、ももこを癒してくれるとても優しい方ですが、奥さんがいることをももこに言えないまま、ももこと親しくなり、一度は関係がこじれかけました。
奥さんのことをうやむやにしたまま、二人の恋は終わるのかと思いましたが、多賀谷さんはももこのために奥さんを探し出し、離婚届を提出しました。
ここで晴れて二人は結ばれました。
この二人は、ももこが元彼との関係が微妙になっている時も親しくしていましたが、お互いに自分の以前のパートナーと別れてけじめをつけました。
ももこは、元彼と別れた時、多賀谷さんに「別にどうってことはないけど、彼氏と別れました」と宣言しました。
多賀谷さんも、奥さんと離婚した時、「別にどうってことはないけど、離婚しました」とももこに伝えたのです。
お互いに惹かれあっていたからこそ、相手に対して誠実にいようとしたのだろうなと思い、お似合いな二人だなと感じました。
ももこは恋愛体質で、恋に盲目になりやすい女の子という感じです。
多賀谷さんが転勤になる時も、多賀谷さんについていくから会社を辞める、とまで言い切っていました。
しかし、結局彼女は超激務な会社を辞めず、多賀谷さんと遠距離恋愛を続けているのです。
仕事に忙しく、彼氏ともなかなか会えず、増してや家にもろくに帰れないような激務な会社でも、彼女はその会社での自分の役割を見出して仕事を続けているのです。
結末には、入社した後輩に対して、「仕事なめんなよ」と笑顔で忠告するももこの表情がとても好きでした。
この「午前３時の無法地帯」には午前３時の危険地帯」という続編があります。
続編ではももこは準主人公で、あらたに「たまちゃん」というメガネの女の子が主人公でストーリーが進みます。
続編でのももこには活躍場面があまりありませんが、多賀谷さんと順調に恋愛を続けていたり、たまちゃんの面倒を見たりと、「無法地帯」では見れなかったももこの姿を見ることができます。
また、これらのシリーズは、ももこやたまちゃん、多賀谷さんの他にもたくさんの魅力的な登場人物がいます。
今回はももこの話を中心に書かせていただきましたが、私はP-DESIGNの営業マン・輪島さんが好きです。
いつも険しい顔をし、仕事に厳しく、何人もの新人を辞めさせるような強面の先輩ですが、実は気が小さくて心配性な一面もある人です。
後輩を心配しすぎてそわそわしたり、営業先の人に悪口を言われているのを聞いて落ち込んだり、普段の厳しさから想像できない可愛らしい一面のあるキャラクターです。
「午前３時の無法地帯」を読む時は、ももこのだけでなく輪島さんや他の登場人物のシーンもしっかりと読み、ねむようこさんのワールドに浸ってください。
オススメです！
