大奥、13巻 感想
※ネタバレ注意です※
よしながふみ先生によって描かれる江戸時代の「大奥」を舞台にした歴史物語です。
この漫画の最大の見どころは何と言っても、男女が逆転した大奥を舞台に物語が進んでいく所ですよね。
前回の12巻で、ついに男女が逆転する原因ともなった男性だけが罹患する病『赤面疱瘡』へ治療対策が実を結び一旦話は落ち着きました。
今回は幕末篇が新しくスタートします。
メインキャラクターは第十三代将軍徳川家定と、彼女に仕える事になる阿部伊勢守正弘です。
一旦赤面疱瘡が落ち着き男女比が正常に戻りつつある世界で、再び女将軍が大奥の主になりますが、この巻では実の父親である徳川家慶に性的虐待を受け続けた家定が将軍になるまでがメインで描かれています。
兄に変わり家督を継いで伊勢守になった阿倍正弘は若くして才能を発揮し、老中に取り立てられました。
そして正弘は、男性の家老が権勢をふるう中で出過ぎず如才なく出世して行くなかで陰間として生きていた瀧山を自分の腹心の部下として取り立てます。
この瀧山こそ最後の大奥総取締役となる男でした。
今回は阿部正弘が家定の苦しい現状を察知し、家定の実の父親であり第十二代将軍家慶から彼女を守る為に奮闘する姿が描かれています。
久し振りに大奥の中のドロドロとした人間関係や、将軍には逆らえない中で知恵を絞ってキャラクターたちが窮地を脱する姿が描かれていく人間模様はぐんぐん引き込まれました。
阿部正弘の懐の深さや機知の素晴らしさ、その気持ちを汲んで動く瀧山はとても魅力的です。
何より徳川家定が自分の為に尽力してくれる阿倍正弘の姿に、自分にはこんな家臣がいるのだと心を動かされて将軍になる事を決意するシーンは鳥肌が立ちました。
今回の巻は特に人間の心の動きがまざまざと描かれていて読みごたえが十分で、男女逆転大奥の魅力が沢山詰まっていると思います。