天堂家物語、1巻 感想
※ネタバレ注意です※
物語の舞台は明治維新が終わり、若干の華族が残っているぐらい、でしょうか。
伯爵家のお嬢様「蘭」が、今、跡継ぎ争いで血なまぐさくなっているというウワサの「天堂家」に嫁入りしたくないと輿入れ途中で逃げ、川に入水自殺をしたところを主人公に助けられて物語はスタートします。
この主人公、なんと主人公なのに「名無し」なのです。
というのも、捨てられた女の子であったため名がなく、主人公は山で「じっちゃん」に育てられていました。
この親代わりとなる「じっちゃん」は主人公のことを「チビ」と呼んでいたために名がないのです。
町の生活も知らず「じっちゃん」が死んでからは一人でひっそりと暮らしていた主人公。
そんな彼女がお嬢様である「蘭」様と出会い、蘭の身代わりとして天堂家に向かいます。
しかしあっさりと婚約者の「雅人様」に蘭ではないと見破られますが「人を助けてから死にたい」と主人公は雅人に語ります。
本当はじっちゃんが死んだ時に自殺をしたが失敗した、じっちゃんが命を粗末にしようとしたから怒ったんだ。
それなら人を助けてから死んだら、じっちゃんも許してくれる。
この主人公はびっくりするぐらい、自分の命や生というものに執着がありません。
とにかくじっちゃんと会いたい。それだけ。
そこにまさに跡目争いでドロドロした一族の中にいる雅人と出会うことで、死ぬ争いに巻き込まれるかもしれない「蘭」の身代わりとして主人公は天堂家で過ごすことになります。
天堂家の暮らしはふとんもふかふか、ご飯も美味しい、着物もキレイ。
しかし主人公はそんな暮らしより、じっちゃんと育った家でじっちゃんが守った畑を耕し、ひっそりと暮らすことが望みというぐらい、じっちゃんが彼女の「核」です。
そんな「核」と彼女を切り離すためにこの巻の最後、雅人はびっくりする行動に出ます。
この行動の描かれ方が圧巻。
引きずり込まれて雅人と主人公の今後を見続けたい!と思ってしまいます。
2巻以降がとっても楽しみです。
またほかの天堂家の人物や、行方知らずの蘭、いろいろと伏線がありそうです。