※ネタバレ注意です※
ケーキ屋さんでアルバイトを始めた大和に惚れてしまい、自分のことが好きなのでは、と勘違いしてしまったイケメンパティシエ・一之瀬の登場によって、猛男は恋の宣戦布告を受けます。
大和の言動の一つ一つをすべて自分の思い込みで都合よく脳内変換し、ぐいぐいいきつつ、また、猛男にも強気で「凛子と別れてくれ！」と迫ります。
自分はいまだに恥ずかしさから、「大和」と名字呼びをしてしまうのに、「凛子」と呼び捨てにする一之瀬。
男臭いただの高校生である自分に対し、イケメンで高級カーに乗る一之瀬。
何より、大和がバイトでの時間を「楽しい」と笑顔で語る姿に、猛男は「大和は自分と居ていいのか」、「大和には他に相応しい人が居るのてはないか」、「大和は『他』を知らないから自分を好きだと思っているだけなのではないか」、と悩みます。
そんな猛男の様子が気になる砂川。
姉の愛に話をすると、愛は、子どもの頃、猛男が可愛がっていた迷子の犬の飼い主が見つかった時、我慢して泣きもせずに「よかったな」、と言ったエピソードを引き合いに出し、よいところでもあるけれども猛男の弱点である面として、「相手が幸せだったらそれでいい、と自分を引っ込めてしまうことがある」と心配します。
そんな風に、「自分は大和に相応しくないのでは」と悩む猛男ですが、「大和を誰にも渡したくない」という気持ちを再確認し、「大和にずっと自分の隣で笑っていて欲しい」と強く心に誓い、一之瀬に宣戦布告し返します。
それを受けて、コンクールで金賞をとって、大和に告白する、と一之瀬は猛男に宣言します。
宣戦布告し、大和を渡したくない、と気持ちを固めたけれども、そんな一之瀬に対して不安が拭えない猛男を、砂川は海に誘います。
今巻は、コンクールでハプニング発生、告白の行方は、という煽りの次巻予告で締め括られます。
一番の見所は、何事にも確固たる「自分」を持って、それを貫くことで、周りにもエネルギーを与えてきた猛男が、自らに対しコンプレックスを抱き、他に対して自信喪失しかかってしまうところだと思います。
今までも、女心が分からない自分を「俺はダメなやつだ」と責めることはありましたが、それは自分に対する内省的なものでした。
今回の猛男は、それとは異なり、自分と他人を比較し、コンプレックスを抱いてしまうのです。
いつも周りが何と言おうと強い「自分」を持って突き進む猛男のそんな姿は、はっとさせられました。
けれど、完全無欠の「スーパーヒーロー」的なポジションだと思っていた猛男のそんな面は、大和への想いの純粋さ、強さを今まで以上に読む側に伝え、より、猛男を身近に感じることができました。
また、そんな、今まで見たことのない猛男の心を敏感に察し、気遣う砂川の目線が、またしんみりさせられました。
彼女としての一番は大和だけれど、大和とは違う位置にいる存在としての猛男の一番である砂川の想いも、口数は少ない代わりにその目線から語られているようでした。
第三者から見ていたら、大和は何があってもだけなのではが大好きなことは揺るがない、と分かるのに、不安になってしまう気持ちの奥には、「大和が一番幸せになれるには」を考えてしまう猛男の性格があるのだろうな、と思えます。
お互いが、お互いの幸せを考えてしまう二人だからこそ、いろんなことを考えすぎずに、ストレートに、「相手の一番の幸せは、自分が一緒に居ること！」だと早く気づけるとよいな、と次巻に期待を込めます。
