先生!は河原和音先生が描く先生と生徒が紡ぐ恋愛漫画です。作品が掲載されていた期間は２００３年までですが、今なお色あせないくらい素敵な作品だと思います。
主人公の島田響ちゃんは高校生になるまで恋愛らしい恋愛をしてきませんでした。それが、なんとなく社会科教師の伊藤貢作先生が気になりはじめ…というとこからがスタートです。連載時期がちょっと昔なため、たまごっちとかが出てきてとても懐かしい気分になります。
この漫画は付き合うまでの過程もとても楽しいですが、付き合ってからの「学生と先生の恋愛関係を保つのはどのくらい難しいか」という点がとても読んでいてドキドキしました。色んなライバルが現れたり、友人の恋を応援したりと、ちょっと普通ではないかもしれませんが、高校生活を謳歌している感じがとても好きです。
例えば、同じく高校生で積極的に伊藤先生にアプローチする生徒がいたとしても、バレてしまうことを恐れて何も言えなかったり、ととてもハラハラしてしまいます。うっかりライバルに宣言してしまったことで学校全体にばれてしまうのでは、というシーンは本当にハラハラしました。ライバルの女の子もなんだかんだ憎めなくて、本当に先生が好きなんだなぁと感じてどっちを応援していいかわからなくなってしまったことも…（笑）
また、大人になってから読み返すと先生たちも完璧な大人ではないんだなぁということがわかってとても楽しいです。主人公の響ちゃんと先生のカップルの他に、かつては恋のライバルだった女性の先生と、響ちゃんの男友達が恋愛関係になるようなならないような…というお話もあります。で、その先生が過去の恋愛経験から頑なになってしまったり、まっすぐな高校生からの恋愛感情に戸惑ったりとする様は本当にキュンときてしまいます。大人であっても恋愛一つで右往左往してしまうよなぁ、と感じた一幕でした。
サブキャラクターたちの恋愛模様もとても魅力的で、私はそのかつて響ちゃんと恋のライバル関係にあった女性の先生（中島先生）と、響ちゃんの男友達（河合浩介）の恋愛模様がとても好きです。高校生としてモテて、割となんでもできてしまう河合くんが初めて本気になったというのが高校の先生というところにとてもドキドキでした。学生、というか若い頃の全能感を持っている河合君の挫折と、それでもあきらめきれないくらい中島先生が好き、という感情は中島先生じゃなくてもドキドキしてしまうのではないでしょうか。紆余曲折はありますが、どのカップルも全体的に幸せいっぱいにお話が終わりますので安心して読める作品です。
私の一番のお気に入りの話は、全体的に大人で飄々としている伊藤先生が初めて感情を露わにするシーンです。高校生の響ちゃんから見ると大人な伊藤先生ですが、普通の２０代の青年で、悩んだりするんだなぁという部分と、彼の一番の悩みどころが「前途ある若者である響ちゃんと、自分がこのまま付き合っていいものかどうか」という部分がとても好きです。特に後者の感情が出てきたときは、イマイチ響ちゃんが好きかどうかわからなかった先生の感情が見えて嬉しくなってしまいました。と、同時にさっさとその気持ちを素直に響ちゃんに伝えてあげて、ともだもだしてしまいました。伝えること自体が響ちゃんの成長の妨げになるかも…と頭の良い人は色々考えてしまうんだなぁと思いました。恋愛においては誰しも臆病になるものなんだなぁと思えてよかったエピソードです。
この作品は広瀬すずさんと生田斗真さんで映画化されているんですよね。まだ見ることができていませんが原作がとてもよいものなので期待してもいいのではないでしょうか。冒頭の手作り衣装はどうなるのか気になるところです。
