動物のお医者さんは北海道の某大学の獣医学部生の男子学生西根ハムテル(あだ名、本名は公輝)と彼の飼い犬シベリアンハスキーのチョビを中心とした動物と人間がおりなすコメディ漫画です。
獣医学部での話となると学生同士の恋愛とか動物の悲しい別れとかを想像しちゃいますが、動物のお医者さんはそういう要素ではなく個性豊かな動物たちとそれ以上に個性があるかもしれない人間たちの日々の出来事や小さな事件をユニークな視点で描いています。
主人公ハムテルの飼っているシベリアンハスキーのチョビは(性格は優しくかわいいけれどシベリアンハスキー独特の顔の模様で怖がられる)は大学の漆原教授に半ば押し付けられるように飼うことになったのですが、その時漆原教授の言った「君は獣医になる『このカシオミニを賭けてもいい』」なんてセリフは動物のお医者さんを読んだことがない人でも知っているのではないでしょうか?
カシオミニ(小型電卓)が2,000円ほどということからも時代が違うのはわかると思いますが、それでも全然色褪せない名作少女漫画であり動物漫画だと思います。
先述したとおり、作品を彩る動物とキャラクター達はとても濃いというか個性的なのですが彼らも彼らの日常に起こることも決してとっぴでありえないことではなく、身近でリアルです。
作者さんが実際に獣医学部の取材に行って教授や学生の話を聞いたり、他にも舞台になる所には自らおもむき写真を撮っているそうなのでなるほどといった感じです。
そのため笑えるだけではなく酪農の話や動物の生態など知識が増えるのも面白いところです。
私が好きなキャラクターはハムテルの先輩の院生、菱沼さんです。
彼女はハムテルとその親友二階堂の前に印象的に現れた美人(だと思うのですが)な先輩なのですが、彼女と他のキャラクターの間にはまったく恋愛的な要素はなく彼女の強烈な個性で読者を引きつけます。
菱沼さんは異常な低体温低血圧で異様に行動がゆっくりというか痛みにも鈍く、盲腸が破裂寸前まで行ったのに痛みに気づかず、しかも手術中麻酔が切れたのでライトに映る自分の腸が切られる様子を眺めていたというめちゃくちゃなエピソードの持ち主です。
体が弱いようでもお腹は非常に強く食中毒にもならない体と同様、ゆっくりしていてトロいようで意外と押しが強く図太く変に行動的なので見ていて楽しいキャラクターです。
また、動物は好きだけど動物に懐かれず(チョビは別)猫に好かれようと猫と同じレベルでやり取りをする様は北海道の獣医学部(多分モデルは北海道大学)の院までいった人とは思えないほど愉快です。
動物のキャラクターではもちろん1番印象的でかわいいのはハムテルのチョビなのですが、私が特に好きなのはチョビと同じシベリアンハスキーで犬ぞりチーム仲間のシーザーです。
彼はチョビとは対照的なシベリアンハスキーっぽい性格でフレンドリーで陽気で喧嘩好きで後先を考えない…飼い主からしても「何考えてるかわからん」犬なのですが、それがとても犬らしいというか見ていて元気が出ます。
犬ぞりの時の「オレはやるぜオレはやるぜ」は名言?だと思います。(動物のお医者さんのなかで動物は喋りはしないのですがモノローグがあるのです)
シーザーとジャック(彼もまたシベリアンハスキーっぽいシベリアンハスキー)がひょんなことから逃げ出して迷子になってみんなで探すエピソードで発見された時に交番に繋がれてドブに落ちた体で元気いっぱいに吠えてるのはめちゃくちゃ笑いました。
他にもネズミが大の苦手で気絶するほど嫌いなのにハムテルと一緒に獣医学部に入ってしまった二階堂やアフリカ大好きでパワフルすぎる行動力で周りを振り回す漆原教授、ハムテルのおばあさんの飼い猫でチョビのお姉さん役の関西弁あねご猫のミケ、ハムテルがひよこの時買ったから「ヒヨちゃん」と名付けられた西根家最強の生物ニワトリのヒヨちゃん等、個性的なキャラクター達はみんな魅力的で親しみが持てます。
世界観は本当にリアルなのですが基本的に嫌なキャラクターや酷い事件などは起きないので安心して読めますし、老若男女誰にでも自信を持ってオススメできる少女漫画です。
全12巻ですがどの話も本当に面白くて未だにもっと読みたい!と思ってしまいます。
以前にドラマ化されたこともありましたが、今またなにかメディア展開したら絶対に人気がでるんじゃないでしょうか?