しゃにむにGO 全32巻 感想

この漫画は、将来有望とされていた中学陸上ランナーの伊出延久が、ある日偶然出会った尚田ひなこという女の子に一目ぼれしたことから彼女が通う幕ノ鎌高校に進学し、陸上を辞めて彼女のいるテニス部に入部するところから始まります。
しかしそこで再会したひなこは足を怪我してテニスを辞めていたのです。
主人公の延久は運動神経抜群で最初はルールすら知らなかったテニスのコツを徐々に掴んでいってみるみるうちに上達していきます。
メンタル面もとても前向きで強く、テニスをとても楽しんでいます。
そんな彼がテニス部で出会ったのがジュニアでテニスのトッププレイヤーだった滝田留宇衣です。
留宇衣は、実力はあるもののメンタル面の弱さからいつも試合の途中で集中を切らしてしまいます。それが原因で試合で勝ちきれず、父親からはテニスを続けるのを反対されテニスで無名の高校に進学したのです。
そんな正反対な性格の延久と留宇衣が出会い、ダブルスを組むことになります。
この漫画はとにかく熱いです。少女漫画ですが女性だけでなく男性も絶対に共感できます。テニスをやっている人はもちろん、スポーツをやっている人ややっていた方たちにぜひ読んでほしいと思いました。
私は過去に陸上をやっていたのでこの漫画を読むと当時を思い出し共感したり熱い気持ちが蘇ったりします。
試合は実力だけでなくメンタルも強く影響することがこの漫画では表されています。
今までスポーツを題材にした漫画はたくさん読んできましたが、この漫画が他のスポーツ漫画と違うのは登場人物の心理描写がしっかりと描かれているところです。
主人公の心理描写だけでなく、周りの人たちにも各話でスポットライトが当てられます。
留宇衣だったりひなこだったり対戦相手だったり、それぞれの抱えている過去や葛藤、想いがとても丁寧にリアルに描かれています。
漫画なのにまるで本当にそこで生きているかのように思えてきます。
特にひなこの従弟であり延久の恋のライバルでもある高校テニス界でナンバー１の実力を持つ佐世古駿は、最初は笑顔の裏に隠された感情が読めずこわい存在だという印象を持っていて苦手なキャラでした。
しかし話が進むごとに彼の抱えている家庭の問題や心の葛藤が見えてきて、印象が変わり応援したくなりました。
他の対戦相手も敵である前に同じように悩んでいる一人の人間なんだと気付かされ、どのキャラも魅力的に見えてきて気付けば敵味方関係なく好きになっています。
また、コマ割りがとても上手で場面場面の魅せ方が素晴らしいです。テニスの試合の場面は勢いがあり迫力が伝わってきて夢中になれます。
最初は短期間でテニスが上達していく延久に嫉妬をしていた留宇衣でしたが、互いに刺激を受けながら成長し二人の間に絆が生まれていく過程は素晴らしかったです。
メンタルが強く突き抜けて明るい延久と過ごす中で留宇衣もいい影響を受けることができたのだと思います。
試合中にいつも途中で集中が切れていた留宇衣がテニスへの情熱を取り戻しメンタルの弱さを克服していく場面はとても感動しました。
かなり重いストーリー展開もありますが、延久の繰り出す親父ギャグや持ち前の明るいエネルギーで救われています。
延久のひなことへの恋心の行方も見どころです。足を怪我してテニスが出来なくなってしまったひなこが、延久との再会によって少しずつ前を向けるようになっていく展開も素敵でした。
スポーツをしている人、していた人に読んでほしいと言いましたが、スポーツが苦手な人にも読んでほしいです。また恋をしている人、恋をしてみたい人にもおすすめです。
きっとスポーツや恋の魅力に気付かせてくれると思います。
この漫画から溢れ出す情熱が人の心を動かし熱くさせてくれます。