赤ちゃんと僕の一番の見どころはほとんどの登場人物が美男美女だという点です。
ほとんどのキャラクターがクラスの人気者だったり、そうでなくても顔が整っていたりと読んでいて気持ち良さを感じさせてくれます。
元々、作者の羅川真里茂さんの描くキャラクターは万人受けしやすいデザインなのですが、赤ちゃんと僕はそういう点を最大限に生かして書かれた作品だと思います。また、それだけでは浅い作品になってしまいがちですが赤ちゃんと僕は一人一人が人間としての性格やバックグラウンドをきちんと考察された上で書かれていますので、読みごたえがたっぷりの作品になっています。
まさに笑いあり涙ありで、考えさせられるエピソードが満載です。
私が赤ちゃんと僕の中で最も心に残っている話はいじめに関するもので、前の学校でいじめにより自分の受け持ったクラスの子を亡くしてしまった教師が主人公である拓也のクラスに配属されるところから物語は始まります。
一見すると、冷たい先生で子供たちと距離を置こうとしていることが分かるのですが、その内面ははかり知れないほどの葛藤を抱えていました。物語の終わりに花束をこの先生が今受け持っている生徒たちから贈られるシーンがあるのですが、そのシーンが凄く胸に響きました。
まるで自分の深いところにある感情をえぐられるような感覚です。これは羅川さんでないと描けない物語だと思いました。
赤ちゃんと僕はこのように色んな感情の詰め合わせのような作品で、クラスの人気者が抱える気持ちも分かるし子供を持つ親の気持ちも分かる。様々な人の気持ちが分かるようになっています。
そして、嫌な人間が一人もいないというのも凄い点だと思います。
意地悪を言ってきたり、やってはいけない事をやるキャラクターは出てくるのですが、そこに至るまでの心の内面を描いてくれているので読んでいて不快な感じが全くありません。
それどころか、自分にも心当たりがあることがほとんどなのでより人間らしいキャラクター設定になっています。
子供が中心の赤ちゃんと僕ですが、主人公である拓哉の父親の春美と今は亡き母親の由香子の恋愛物語は新鮮な感動に満ちていて沢山の人に読んでもらいたいと思うストーリーでした。
拓也が生まれる前の話を描いているのですが、拓哉の父親は若い頃はチャラくて仕事は出来るけど女性関係にはルーズでした。そこが拓哉の母親と出会って少しづつ変わっていくのですが、結局拓哉が生まれて間もなく亡くなってしまいます。最後の由香子の回想シーンや台詞は切なくてどうしようもなるくらいです。でも、羅川先生の凄いところは悲しい話で終わらせないで、そこに一種の救いを描く点です。
春美と由香子のストーリーもそのようになっているので、読者は救われた気持ちになります。これは実際に赤ちゃんと僕を読んでみないと分からないところかもしれません。
改めて赤ちゃんと僕は子供にも大人にも勧めたい名作中の名作だと思いました。
主人公の拓哉だけでなく親友のゴンちゃんやモテるクラスメイトの藤井くん、それぞれ男子に思いを寄せる女子たちなど濃いキャラクターのオンパレードです。当初は、母親を亡くした拓哉が弟の実を何とか育てていくところに焦点が当てられています。前半は実と拓哉の物語、後半は脇キャラの物語という風にストーリーが何層にも練り込まれています。読むたびに新しい発見と感動があり、手元に一生置いておきたい漫画の一つになりました。
子供の頃読んだ赤ちゃんと僕ですが、大人になった今も大切に読んでパワーがなくなりそうな時にエネルギーを与えてもらっています。すでに有名な名作ですが、より多くの人に読んでもらいたいと思える作品です。
